Q&A
よくある質問
Q&A

相談セミナーについてのご質問

ご利用者様それぞれのお悩みの解決方法や障害への理解を深めていただくためにも、直接のご相談や遠方に赴いてのセミナー・講演会など様々な活動を行っています。これまでの多くの障害支援経験を通して得た専門知識をより分かりやすく、実践しやすいようにご提案させていただきます。

  • 自閉症の診断をもらった3歳児の母親ですが、偏食が多くて困っています。栄養が偏ると思って無理やり食べさせると癇癪が酷くて無理です。どうしたらよいでしょうか。

    自閉症児の偏食は、触覚や味覚などの感覚過敏や新奇刺激に対する不安や抵抗が観察されます。新奇刺激に対する不安や抵抗は、他者が食べている様子を見て慣れて来ると食べ始める可能性があります。感覚過敏に関しては無理やり食べさせることは止めた方が無難です。食に対する嫌悪性が増し、強要する人に対する抵抗が生じる可能性があります。偏食は、少しずつ交渉しながら食べることを試み、無理やり取り組まないようにします。私の経験でも、幼児期に偏食がある子どもでも、無理やり食べさせないでスモールステップで取り組んだお子さんは、大きくなっていろいろと食べられるようになっています。

  • トレーニングや療育を受けると発達障害は治って、普通の子どもと同じようになりますか?ある療育施設の宣伝文句の中には、うちに来れば話せるようになるとか、知能がアップするなど書いてありますが、本当でしょうか?

    低年齢2,3歳の発達障害のお子さんに週40時間以上の集中的な療育を施すことで、認知能力がアップしたり発語を促進するなどの効果は確認されています。そのような取り組みを早期療育といってアメリカなどでは盛んに取り組まれています。日本でもそのような動きを取り入れている療育施設もあります。しかし、その効果の範囲については検討が必要です。知的に中程度以上の場合に平均レベルまで、伸びる可能性は高いのですが、それ以下だと伸びにある程度限界があります。また無発語だったお子さんが、発語するようになるのも効果として認められますが、どの程度まで伸びるかは認知的な重さに関連があります。

    また平均レベルまで知的機能が向上したお子さんでも、自閉スペクトラム症や注意欠如多動症などの発達障害の特性は残っていて、社会性や行動面の支援、環境的なサポートが継続的に必要になることが多いです。

    ですから、トレーニングや療育により認知発達やさまざまなスキル獲得の向上に寄与するのは間違いないですが、発達障害が治るというのは言い過ぎかもしれません。

  • 自閉スペクトラム症の人に多い聴覚過敏。大きな音や他者の奇声や泣き声に過剰に反応してしまい、耳を塞いだり、静かな場所を求めて逃げ回ったりします。イヤマフやカムダウンエリアに連れて行く以外に対応法はありますか?

    聴覚過敏の人は、そうでない人に比べて音に対して過剰に受け止めてしまい、我慢ができないようです。高機能自閉症の人の中に、そのような症状を持つ人がいて、手記や講演の中で直接、訴えられています。そのような人には、そのような大きな音を避けるための方略として、工事現場などで騒音を避けるために作業員の人がつけているイヤマフの装着が役に立つ人がいます。また、カムダウンエリアのように音源から離れた場所にある隔離された部屋に逃避することも効果的です。さらにそのような状況になった時に、第三者である支援者が、その場に連れて行ってあげるよりも、自分で逃避できたり、要求できたりする方が苦痛は少なくなります。どちらも同じように嫌悪刺激に晒されるのに、後者が効果的なのは、環境を自律的にコントロールできることが他律的よりも効果的であるという研究結果と一致します。

    上記は、いずれも嫌悪刺激をなくしたり消すといった負の強化の働きを持った方法です。それ以外に、嫌悪的な音をマスキングする方法もあります。たとえば部屋にBGMを流す方法です。

  • 発達障害の支援の分野で応用行動分析が効果をあげていますが、ADHDについて何か貢献していることがありますか?

    ADHDは、不注意、多動性、衝動性を主症状とする発達障害の1つです。バークレイは、「行動上の抑制機能の欠如」としてADHDの主症状を説明し、ADHDの神経発達モデルを提唱しました (Barkley, 1997) 。バークレイは、行動上の抑制機能を3つあげています。①即時の報酬への反応、または好ましくない事象への回避に対する衝動性の抑制、②選択を許可する行動の現行パターンの休止、③自発的な活動の中断に対する衝動性の抑制。臨床的には、広範囲にそわそわすること、頻繁な活動の変更、過剰なおしゃべりや運動、課題の完成または教示の遂行の失敗、短期記憶・学業成績・対人関係の問題ががあり、これらは、衝動性のコントロールの欠如と考えられている。

    行動分析学の研究者は、セルフコントロールの行動論モデルの文脈で、衝動的行動の問題を研究している。このモデルは、即時に提示される小さな報酬(SSR)と長時間経過後の大きな報酬(LLR)の間の選択である。LLRよりもSSRを選択することが衝動的選択であり、SSRよりもLLRを選択することがセルフコントロール選択である。多くの研究では、ADHDの人は、そうでない人よりも、衝動的選択を行うことがわかっています (Schweitzerら, 1995; Sobuga-Barkeら, 1992)。

  • 応用行動分析では、行動問題の対応で罰を使わないと言われますが、それで子どもを躾けることはできますか?

    確かに行動分析的な行動問題へのアプローチでは、行動をやめさせるための体罰などの嫌子を提示する方法を使いません。これは、倫理的な基準から使わないようにしています。その代わり、行動が起きないように環境を整えたり、代替行動を強化するといった間接的な方法を使うとか、不適切行動を消去するといった方法を使います。また嫌子を提示することはしませんが、好子を取り上げる弱化の方法は使います。

     

  • 自閉症スペクトラム障害(ASD)の子どもも、早期療育よって知能が高まり発語が出るようになれば自閉症でなくなるのでしょうか?

    乳幼児期に自閉症スペクトラム障害と診断され、早期療育を受けて成長するお子さんもたくさんいらっしゃいます。確かに早期療育を受けることで、無発語だったのに発語が出るようになったり、知能指数が高まったり、発達を促進する効果はあります。これは1970年代から米国の応用行動分析的な集中療育によって検証されている事実です。しかし、発語が出る、知能指数が高まることが、自閉症スペクトラム障害ではないということにはならないでしょう。自閉症スペクトラム障害の中には、知的障害が合併する人としない人(高機能自閉症アスペルガー症候群)がいます。ということは、発語が出て知能が高まったとしても、コミュニケーションや社会性の課題は残るので、その後も何らかの支援が必要だろうということです。

    これは個人的な経験ですが、乳幼児期に早期療育を受けていない高機能自閉症アスペルガー症候群の人も、幼い頃に発語がなかったり、知的発達に遅れがあったというエピソードがあります。また発達障害でない子どもも幼い頃に早期教育を施すことでいろんな知識や能力を示しますが、将来、天才に育ったという話はあまり聞きません。アインシュタインのような天才も、早期療育を受けていたという事実もありません。早期療育も発達を促進する一定の効果があるのは確かですが過大評価は禁物です。

  • 自閉症スペクトラム障害(ASD)の子どもも、早期療育よって知能が高まり発語が出るようになれば自閉症でなくなるのでしょうか?

    乳幼児期に自閉症スペクトラム障害と診断され、早期療育を受けて成長するお子さんもたくさんいらっしゃいます。確かに早期療育を受けることで、無発語だったのに発語が出るようになったり、知能指数が高まったり、発達を促進する効果はあります。これは1970年代から米国の応用行動分析的な集中療育によって検証されている事実です。しかし、発語が出る、知能指数が高まることが、自閉症スペクトラム障害ではないということにはならないでしょう。自閉症スペクトラム障害の中には、知的障害が合併する人としない人(高機能自閉症アスペルガー症候群)がいます。ということは、発語が出て知能が高まったとしても、コミュニケーションや社会性の課題は残るので、その後も何らかの支援が必要だろうということです。

    これは個人的な経験ですが、乳幼児期に早期療育を受けていない高機能自閉症アスペルガー症候群の人も、幼い頃に発語がなかったり、知的発達に遅れがあったというエピソードがあります。また発達障害でない子どもも幼い頃に早期教育を施すことでいろんな知識や能力を示しますが、将来、天才に育ったという話はあまり聞きません。アインシュタインのような天才も、早期療育を受けていたという事実もありません。早期療育も発達を促進する一定の効果があるのは確かですが過大評価は禁物です。

  • 保育園の2歳児で、ことばが出なくて明らかに発達の遅れが見られる子どもがいます。目線があってニコッと笑顔になることもあるので、自閉症スペクトラムではないと思いますが、どんな発達障害なのでしょうか。

    保育や幼稚園の関係者の間でも、自閉症スペクトラムを始めとする発達障害のことが知られるようになってきました。しかし、目線を避け、人を避けて一人でいるのを好むタイプを自閉症スペクトラムと思っている専門職の人が多いように思います。目線が多少合って笑顔になるような子どもでも自閉症スペクトラムの可能性があります。自閉症スペクトラムの確定的な基準ではないですが、手をひらひらさせる常同行動やつま先歩きが多いなどの身体的な動きなども兆候としてみられます。

  • 発達障害の子どもに対しては、障害特性に配慮して困難にぶち当たらないように保護的に配慮してあげた方が良いのでしょうか?困難を克服するために鍛えるという発想はないのですか?

    この質問に対しては、一般的にはい、いいえがはっきりしないので、個々の状況に合わせて対応してあげることが必要だと思います。ただ、こういうことは言えると思います。

    風邪の感染と免疫の関係に例えて説明したいと思います。全く無菌状態で子どもを育てれば、子どもは風邪に感染することはありませんが、免疫はできていないので、急に外の環境に置かれると風邪やさまざまな感染症によって重篤な症状を呈するでしょう。風邪を防ぐためには、ワクチンを接種する、あるいは少しはウィルスにさらして免疫を獲得することです。重症になれば病院での治療が必要です。

    ですから、ある程度、環境に適応するには社会の中にさらして、その中で免疫を獲得できるように支援を行うことも必要ではないでしょうか。しかし、どの程度の環境でどの程度さらすかは、一人ひとりの発達障害の度合いを見て行う必要があるでしょう。大雑把に言うと、軽度の症状の人は、通常の環境の中での支援、重度の症状の人は保護的な環境の中で支援をするということでしょう。

     

     

     

  • 私の保育所に通っている子どもは椅子にじっと座っていることができません。座るのに適した何か椅子の形状とかありますか?

    まず椅子の高さは子どもの膝の高さに合わせることはわかると思います。足が床に届かないと安定しません。もし椅子が高ければ、足に台を置くことです。さらに3つのポイントをあげられます。

    ①インテリアの座り心地の良い椅子などを見てみると、座る面の手前側が少し高くなっています。学校の椅子は木製で座る面は真っ平です。安定して座るためには手前が少し高くなっている方が良いです。既成の真っ平らな椅子の座る面を修正するには、床のマット材を切って手製のシートを置くと良いそうです。マット材の裏側は、両脇にマット材を貼りつけます。裏返して座ると中央部が湾曲してお尻をフィットさせる効果があります。マット材がむき出しだと見た目が良くないという方は、布のカバーをつけてください。

    ②つ目は、背もたれが腰から肩甲骨の下あたりまで少し背中を押すようになっていることです。こちらも真っ平の場合は、背もたれの部分にクッション材を設置します。

    ③つ目は、椅子のクッション材に滑り止めを敷いてお尻が滑らないようにします。このように工夫された椅子に座ってもらって感想を聞くと、とても安定して座れるとのことでした。

  • 授業中に、おしゃべりしないようにするにはどうしたらよいですか?授業中や集まりで、必ずおしゃべりをする子どもがいます。何度、注意してもやめません。どうしたら良いでしょうか?

    応用行動分析では、「標的行動」を決めてから支援がスタートします。この標的行動を決めること自体が難しいのですが、1つの基準は、応用行動分析で対象とするのは、あくまでも「行動」であるということです。ですから標的行動を記述する際も、具体的に行動を記述することが大切です。行動と行動ではないものを区別する基準は、何か?というと、「死人テスト」を使えばわかります。

    死人テスト:「行動とは死人にできないことである」

    「おしゃべりをしない」について、死んでいる人はしゃべりません。上記の定義をひっくり返すと、「死人にできることは行動ではない」ということになります(論理学では、ある真の命題がある時にその命題の否定の逆は真であると考えられるので、このように結論付けられます)。ですから、標的行動にするとしたら「授業中におしゃべりをする」ということになります。

    ②次に行うのは、記録を取ってアセスメントします。日頃どのくらいの頻度でおしゃべりが起こっているのか、なぜおしゃべりが生じているのかについてアセスメント記録を取ります。一日中、記録を取るのは非常にコストがかかるので、1限目のみなど制限をつけます。

    ③アセスメントの結果は、授業中に「おしゃべりをする」という行動は、先生に注意される、周りの生徒が反応することで強化される注意獲得行動ということが仮定されました。

    ④次は「おしゃべりをする」という行動に対して、どのように対応するかについて考えます。このように不適切な行動に対しては、弱化する手続きを取ることになります。弱化の一般的な方法は注意や叱責です。しかし、注意獲得行動の場合に注意や叱責は、弱化ではなく強化として働くことが多く効果的ではありません。これはアセスメントと仮説からはっきりしています。不適切な行動を弱化するだけの対応はうまくいかないことが多いです。ではどうするか?

    強化の手続きです。何を?授業中に適切な行動をして注目が得られる行動を探すのです。それは何か?授業中にする適切な行動は、手をあげて発言する、問題を解く、先生に注目する、生徒と話し合う、司会をするなどなど様々ありますが、その中で本児にマッチする行動をピックアップします。そしてそれを積極的に強化するという手続きを組みます。

    ⑤あとは実践して、行動が変化するかを見ていきます。そのためには、行動の記録を続け、それをグラフ化して介入を行う前と行った後に有効な変化がみられるかを確認するのです。

    ⑥確認して変化がみられたらその手続きを続けて、十分に変化がみられたら終結です。変化がみられなければ、またアセスメントの②を行います。

    これは、Plan Do See PDCA(計画―実行―確認―アセスメント)の流れと同じです。応用行動分析の実践法は、この点でも注目されています。

  • 次に授業があるので休憩を終わりにして玩具を片づけると、子どもが叩いてきます。叩いたらいけませんと注意すると酷くなるので、あまり対応しないようにしていますが、他児を叩いた時は「ごめんなさいは?」と言って謝らせています。どうしたら叩かないようにできますか?

    子どもがやっている活動を制止したり、注意したりすると、それに誘発されて人を叩いたり癇癪を起こすことがあります。これは、好きなことを急に止めさせられることで起こります。どうすればいいかというと、遊びの終わりの見通しを視覚的に持たせてあげることと、終わりのコントロール権を子どもにあげることです。たとえば、タイマーは時間の見通しのためによく使われますが、タイムタイマーのように視覚的に終わりが見通せるものは有効です。タイムタイマーも見ていないと、急に中止を告げられることと同じになりますので、時々予告をするようにします。

    またタイマーが鳴って終わりを告げて、玩具を取り上げるようなことはしないでください。そうすると余計に癇癪が酷くなります。たとえば、終わり箱や容器を用意してそこにしまうようにさせます。それも無理やりでなく、本人のタイミングで片づけるように少し待ってあげます。容器に片づけるというルーチンが身に付くと、徐々に終わり箱を見せるだけで自発的に片づけるようになるでしょう。

  • 自閉症児が歯科治療に協力的になるための工夫はありますか?

    スウェーデン、ヴァステルボッテン郡の自閉症ハビリテーションチームの介入群では、歯科クリニックで同じ設定で同じ治療者に会いました。歯科に行ってからの治療の手順を示したカラー印刷の冊子を用意し、家庭と歯科医院で手順を復習しました。治療の前には、親と治療者が情報を共有し、何かことばで指示するときは、家でもクリニックでも同じことばかけ(「いすに座って」「ライト」「口を大きく開けて」など)を使いました。治療者への治療協力の程度は、協力、不承不承、非協力的の3段階で評価されました。

    カラー冊子:歯科に行くときのステップを示すもので、入り口のドア、待合室、歯科医、歯科助手、処置室、使う予定の器具などを写した写真を使いました。親との話し合いで写真の内容、文字の付加の可否などを決め、治療目的に応じて並べ替えました。冊子に用意された内容は、以下の通りです。

    ①治療室へ入る

    ②椅子に座る・仰臥する

    ③大きく開口・歯を見せる

    ④歯磨き

    ⑤歯鏡で診察

    ⑥消息子で診察

    ⑦フッ化物

    ⑧予防歯磨き剤で歯磨き

    ⑨X線撮影

     親と治療者の情報共有の内容:全般的な健康、服薬、歯科診療経験、歯磨き習慣、菓子の摂取、恐怖症や特異な点、コミュニケーションの方法、視覚的教示で上手くいったこと、どんなご褒美を与えているかなど。

  • 自閉症児の歯科治療を困難にする要因は、他になにかありますか?

    自閉症スペクトラム児は、見通しを持てない事柄、新奇の刺激、音、人、場所に対して強い不安を持ちます。治療による直接的な嫌子もさることながら、見通しがもてないことによる不安(予期不安)によって治療を回避してしまう場合が多くあるようです。Backman & Pilebro(1999)は、治療者、場所、治療の手順を視覚的に提示することで、治療に協力的になるような介入を行いました。

  • 自閉症児が歯科治療への従事行動を促すためにどういうアプローチがありますか?

    キース・アレンは、次のような介入法を実施して効果をあげました。①本格的な治療に入る前に練習を行うために、子どもが嫌悪を感じる治療項目をあげました。②それぞれの練習項目に対して治療に耐えられるくらいの短い時間(3秒)を設定して、練習を行いました。その時間に治療に協力的であったら治療をやめて休憩し、妨害行動があったら治療時間を延長しました。その治療時間に耐えられるようになったら徐々に時間を長くして行きました(最終的には30秒)。

    さらにアレンは、③治療に協力的だったらシールをあげ誉めるようにしました。治療を妨害する行動をするとシールはあげず誉めませんでした。後でシールを貯めるとおもちゃと交換できるトークンシステムを導入しました。

    30秒間隔の基準を全ての項目で達成したら、治療の前に1分ずつそれぞれの項目を練習し、妨害行動が1分間で15秒以内なら合格としました。全てのテストに合格したら歯科医との治療に入りました。介入の前は、60分の治療時間中52分間、88%の間泣き喚き、暴れ続けました。介入後、妨害的行動は30%以下に減少し無事治療を終えられました。

  • 自閉症児が歯科治療を過剰に嫌がるのはどうしてでしょうか?

    子どもの歯科治療において、治療時の痛みと結びついて条件付けられた恐怖刺激よって回避行動が生じやすいのは言うまでもありません。これが自閉症などの発達障害を伴う子どもの場合は、さらに治療の困難が予想されます。発達障害の子どもは、状況や文脈を理解して行動するのが苦手ですし、ことばの理解が乏しいために歯科医による治療に関する指示は、通じ難いでしょう。

  • 理学療法での応用行動分析的アプローチはなんですか?

    理学療法は、患者にさまざまな運動訓練を課すことによって身体機能の改善や向上を図る療法ですが、身体的な苦痛を伴うことによって治療の中断や休止が起こり十分な効果をあげられないことがあります。継続的な運動訓練を支援する上で応用行動分析の手法によって効果をあげることができます。たとえば、①ルールを提示することで一回の運動がどのくらいで終わるのかについて見通しを持たせてあげること、②わずかな筋力の向上を測定できる機器の導入により、患者は理学療法の訓練に従事する助けになります。

  • 糖尿病などの生活習慣病の改善のコツはありますか?

    食行動には、食品の購入、貯蔵、調理・盛り付け、食事、残飯を捨て、後片付けなど一連の過程があります。この中で一番実行しやすい方法を選ぶと上手くいきます。生活の中に運動を取り入れる場合、特別な運動をはじめるよりも、日常生活の中で自然に活動量を増やす方法が上手くいきます。たとえば、①乗り物に乗るよりも足を使うようにする、②エレベーターやエスカレーターよりも階段を使うようにする、③万歩計やカロリーカウンターなどで活動量を測り記録すると目で効果が確認できるので励みとなります。目標が達成できたときには、自分自身に「よくやった」と言い聞かす自己強化したり、「来週もがんばるぞ」と自己教示したり、ご褒美を用意したりします。

  • 応用行動分析は、医療リハビリテーションにも応用できるということですが、糖尿病などの生活習慣病にはどのようなアプローチを取りますか?

    糖尿病患者は、血糖値をコントロールして合併症を予防しながら、病気と上手く付き合いながら生活を送ることが理想的です。そのためには、適切な食行動や運動習慣を身に付け自己管理できることが大切になります。

  • 応用行動分析は、自閉症児者の言語訓練やスキル獲得に役立つイメージですが、医療やリハビリテーション分野でも応用されていますか?

    応用行動分析は、学校教育、カウンセリング、スポーツのコーチング、企業コンサルティング、医療や福祉、交通安全などの分野でも成果をあげています。近年、医療事故、終末医療などの報道から医療のあり方に対する議論が高まっています。その重要な観点のひとつは、医療者は疾患を治すことだけでなく、患者を全人的にとらえることに主眼を置く方向に移っています(張替, 1993)。つまり、疾患そのものだけでなく患者のライフスタイルや生育歴・性格・行動様式-行動を分析し、患者が主体的に治療に取り組めるように医療者は支援する立場にまわるのです。特に生活習慣の改善や自己管理が鍵となる糖尿病(張替, 1993; 安酸, 2000)、腎不全(西谷・岡山, 2001; 玉淵・岡山, 1998)などの治療や病後のリハビリテーション(中島ら, 2004; 河合ら, 2006)、理学療法(山崎・長谷川・山本・鈴木, 2001)において、行動分析的アプローチが注目されています。

  • 放課後等デイサービスは、自閉症スペクトラムを始め発達障がいのお子さんの支援のために解説されています。保育士資格の職員の人が多いのですが、そのせいか小学生でも幼児のような対応されることが多いです。保育士さんは、保育士で幼児に対応することが多いためか、ぐずった子どもをあやすように抱っこする、抱っこして振り回す、くすぐりをするなどスキンシップによる対応が意外と多いのでびっくりします。だいたい、いつ頃まで、身体接触を伴うかかわりを続けていいものなのでしょうか?

    発達障がいのお子さんへのスキンシップは乳幼児期には愛着形成にはとても大切だ思いますが、就学後にやたらスキンシップを取ることは控えた方がよいと考えています。その理由は、私がみてきた発達障がいのお子さんや青年期、成人期の事例からです。それが習慣になって大きくなるまで止められない、思春期まで続くと性的行動にもむずび付きやすいこと、知的障がいや社会性の発達に遅れのあるお子さんの場合に、中高生になってもスキンシップを取るとしてトラブルになる場合があります。支援者に関していうと、少なくとも就学後はスキンシップを伴うやり取りは避けることです。どんなに妥協しても小学校低学年までです。あと大きな子どもを抱っこして振り回してあげるなどしていたら腰を悪くしてしまうのではないでしょうか。

     

  • 子どもは褒めて育てる、叱らない子育てが流行りのようですが、一方で厳しくしつけるべきという話があります。発達障がいの子どもには、どうすればいいでしょうか。

    子どもは褒めて育てるべきという専門家もいれば、厳しくして我慢させることも必要と説く専門家もいます。おそらく自閉症児の場合に、我慢させると酷い癇癪が起こり、保護者もおろおろするだろうし、周りの目が気になって、ついついお菓子を買ってしまうと思います。だから、専門家のいうことは頭ではわかるけど、実行できないし、うちでは無理と感じてしまうでしょう。かといって癇癪を起して買ってあげるのがいいとは思いません。この場では、どうしようもないとしても次から同じ轍を踏まないように考えましょう。

    ・癇癪ではなく「お願い」で買ってあげる

    ・行く前に約束をする

    ・そもそも買い物には一緒に行かない

    ・お手伝いをしたら買ってあげるなど条件をつける

    ・我慢できたら家で他のお菓子をあげる

    などなど、適切にお菓子を獲得できるご自身の子どもに合う方法を考えて実行します

  • 自閉症の人には、視覚的支援や構造化がある言われていますが、本当に効果があるのでしょうか。

    結論から言えば、効果はありますのでぜひ支援に取り入れてもらいたいと思います。これまでの研究では、自閉症の人の支援で視覚的支援や構造化は効果が確認されています。しかし誤用もあるので注意が必要です。たとえば本人の意思や人権を無視した形で活用しようとする場合です。それはうまくいかないどころか状態を悪化させます。まずは一人ひとりに専門的なアセスメントが必要で、そのうえで実践を進めることが大事です。また個別支援だけでなく、機関の連携や地域での自閉症の理解と配慮を進めないとうまくいかないでしょう。

  • 特別支援教育は、発達障害の児童・生徒が学校での不適応を起こしたり、通常の学習についていけなかったりということで始まりましたが、自閉症児のためのカリキュラム(教育課程)はありますか?

    特別支援教育は、平成19年4月から学校教育法に位置づけられスタートしましたが、自閉症に特化した教育課程はありませんでした。欧米の中でもイギリスでは、自閉症の教育カリキュラムを基にした公立の自閉症学校があります。アメリカでは私立校などで公的支援を受けた自閉症や発達障害の児童・生徒を教育する特別支援学校があります。

    日本では知的障害を伴う自閉症の児童・生徒の多くは、知的障害の特別支援学校に在籍しており、知的障害の枠組みで教育を受けています。しかし自閉症児と非自閉症児では、対人関係や認知特性が大いに異なるので、別の教育内容や支援法が必要だということは、専門家の間でも議論されてきました。そこで東京都の特別支援学校の管理職の集団の中で、自閉症の教育課程を研究して、独自に教育課程を提言しています。ホームページにもアップされているので誰でも閲覧できます。https://www.kyoiku.metro.tokyo.lg.jp/school/document/special_needs_education/sociality_01.html

    全国の特別支援学校でも、その動きが広がるといいですね。

  • クレジットカードは使えますか?

    クレジットカードの支払いはできません。現金でのお支払いのみとなります。

  • 予約はできますか?

    予約可能です。お電話にてご予約ください。

  • 駐車場はありますか?

    専用駐車場があります。ご利用ください。

福岡にて、多種多様な発達障害と向き合い、応用行動分析という科学的な見地を用い、その行動の理由を考えることで、少しずつ行動を変えていき、社会生活に順応できるようにお手伝いをしています。支援を行う際はABCモデルという支援方法を取り入れ、いままでの行動の中から正しい改善法を模索し、ご提案しています。

そのほか、直接的な支援活動の以外でも、特別支援学校や成人施設のような支援機関で働く職員の皆様に向けた、遠方へのセミナーや講演会、コンサルテーションといった、職員の専門的な知識向上に役立つ活動も行っています。