はじめに ― 全国から集まった27名との学びの場
2026年1月10日、公益社団法人福岡県社会福祉士会が主催する「認定社会福祉士認証研修(障害分野)」において、発達障がい支援と応用行動分析(ABA)をテーマに講義を担当させていただきました。今回の研修はオンライン開催でありながら、全国各地から27名の社会福祉士が参加されました。対象者の年齢も幼児から成人まで幅広く、参加者の職種も相談支援専門員、施設職員、学校現場の教員、行政職員、医療機関のスタッフなど多岐にわたっていました。
画面越しであっても、参加者の皆さんからのチャットを通じた積極的な質問から、発達障がい支援に対する強い関心と、現場での課題意識の高さが伝わってきました。オンラインでありながら、皆さん顔出しでの参加で、私自身も講師として非常に刺激を受ける時間となりました。
今回の研修は、発達障害者支援法と発達障がいの基礎理解から始まり、ABAの理論と実践、そして環境調整や行動支援の具体的な方法へと進む、終日をかけた濃密なプログラムでした。参加者の皆さんが抱える現場の課題に寄り添いながら、支援の根拠となる理論と、明日から使える実践知をつなぐことを意識して構成しました。
発達障がいの理解を深める ― 特性と行動の背景を読み解く
午前中の最初のセッションでは、発達障がいの特性理解を中心に、ASD・ADHD・SLDそれぞれの認知特性や行動の背景にあるメカニズムについて整理しました。発達障がいの理解は、単に診断名を知ることではなく、「その人がどのように世界を見ているのか」「どのように情報を処理しているのか」を理解することから始まります。
特に、ASDの方が示す「統合能力の弱さ」「実行機能の困難」「感覚過敏・鈍麻」「こだわり」などの特性は、行動の背景を読み解くうえで欠かせない視点です。これらの特性は、単なる“困りごと”ではなく、その人が世界と関わるための“認知スタイル”であり、支援者がそのスタイルを理解することで、行動問題の多くは未然に防ぐことができます。
また、二次障害が「本人の問題」ではなく、環境とのミスマッチから生じるという視点は、多くの参加者にとって改めて腑に落ちる内容だったようです。支援者が本人の特性を理解し、環境を調整することで、行動問題は大きく減少します。行動の背景には必ず理由があり、困った行動は「困っているサイン」であるという考え方を共有することで、支援の方向性が大きく変わることを実感していただけたように思います。
ABAの基礎を“現場の言葉”で伝える ― 行動の科学を支援に活かす
続くABAの基礎では、行動を理解するためのABCモデル(先行事象・行動・結果事象)や、強化と弱化の原理、標的行動の設定方法など、行動支援の土台となる考え方を丁寧に解説しました。
ABAは「難しい」「専門家だけが扱うもの」というイメージを持たれがちですが、実際には非常にシンプルで、誰もが日常的に使っている考え方です。例えば、子どもが宿題をしたら褒める、仕事を頑張ったら給料がもらえる、嫌な音がしたら耳をふさぐ――これらはすべてABAの原理に基づく行動です。
特に、叱っているつもりが実は“注目”による強化になっているケースなど、現場でよく見られる誤解を具体例とともに紹介すると、参加者の方々が大きくうなずかれる様子が印象的でした。ABAは「行動を変える技術」ではなく、「本人の困りごとを理解し、より良い行動を選びやすくするための環境づくり」であることを強調しました。
また、標的行動の設定においては、「人形テスト」や「測定可能性」「具体性」「QOLとの関連」など、支援の質を左右する重要な視点を共有しました。行動支援は、何を変えるかを明確にするところから始まります。曖昧な目標設定は、支援の迷走につながります。